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ケアマネのつぶやき

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「老後レス社会」を生きる

2022-09-27
注目NEW
―――高齢者と就労―――

総務省が今年の敬老の日の前に公表した人口推計によると、65歳以上の高齢者は前年より6万人多い3627万人で過去最多を更新した。総人口に占める割合は29・1%で過去最高。75歳以上は72万人増の1937万人で、対総人口の割合が初めて15%を超えた。

 一方、2021年に働いていた65歳以上の高齢者は、総務省の労働力調査で909万人に達し、前年から6万人増えた。増加は18年連続。65歳以上の就業率は前年と同じ25・1%。65~69歳は50・3%で初めて半数を突破した。

 かって安倍晋三前首相は在任中、「一億総活躍」というスローガンを掲げ、高齢者らの就労を進めるとした。2019年10月4日に召集された臨時国会の所信表明演説で、安倍前首相はこう語っている。

「65歳を超えて働きたい。8割の方がそう願っておられます」「(高齢者の)豊富な経験や知恵は、日本社会の大きな財産です。意欲ある高齢者の皆さんに70歳までの就業機会を確保します」

労働政策研究・研修機構の調査(2015年発表)では、「60代が働いた最も主要な理由」は「経済上の理由」が最も多く、約58.8%。また、2019年度の内閣府の世論調査では、「日頃の生活で悩みや不安を感じている」と回答した人に理由を聞いたところ、「老後の設計」を挙げた人が56.7%(複数回答)で最多であった。

 もちろん、高齢になっても働くことに積極的な意味を見出して働いている人がいる一方

「働かなきゃ食えない」「働きたいじゃなくて、働かざるをえない」という年金だけでは賄いきれない高齢者の厳しい現実があることもまちがいない。

かって老後と言えば「楽隠居」「余生」「悠々自適」「趣味三昧で人生を満喫」などと言われた。今やこの「老後」が無くなったという意味で「老後レス社会」という言葉すらある。この「老後レス社会」を初めて使ったのが朝日新聞特別取材班による、多くの日本人が不安を抱く老後問題の現実を描いた『老後レス社会死ぬまで働かなければ生活できない時代』である。

同書の帯には「『一億総活躍』過酷な現実と悲惨な未来」という文字がおどる。

「道路工事やビルの建築現場、あるいはショッピングモールで必ず見かけるのが制服に身を包んだ警備員の姿です。炎天下でも雨の中でも、朝から晩まで立ちっぱなし。かなり体を酷使する仕事です。しかし彼らの多くに共通するのは、決して若くないこと。それどころか、高齢者が非常に目立ちます。なぜなのでしょうか。ここに「老後レス社会」のリアルな断面を見ることができます。警備員は、70歳以上の就労が増え続けている職種の1つだからです。」

またこんなデータもある。

2020.2.3 日経ビジネス電子版によれば、日経ビジネス記者が「生涯現役の現実」というテーマで取材した結果を「憧れの『生涯現役』 現実は20分に1度の高齢労災」として次のような現実を紹介している。

「着実に増える『転落』『巻き込まれ』『熱中症』

・休憩室で横になっていたところ、近くにあったリネン用品が積まれていたロールボックスパレットが倒れ、下敷きになり死亡(製造業の60代)

・金属部品加工の作業中、回転中の切削刃に巻き込まれて死亡(製造業の70代)

・事務所の庭木の剪定(せんてい)作業中にバランスを崩し、脚立から地面に墜落して死亡(医療保険業の70代)

・天井クレーンの操作ボタンの調節のため、点検台(地上高7m)で作業していたが、落下して死亡(製造業の60代)

・木製の足場を掛けて作業をしていた際、バランスを崩し地上まで約9m落下し死亡(建設業の60代)

・フォークリフトのカウンターウエート(装置が安定するように設置された重り)の上に上っていたところふらついて後ろ向きに倒れ、地上に転落し死亡(貨物業の70代)

・事業所内の庭の草刈りの作業中、倒れたところを発見される。熱中症によるものと思われる(広告業の80代)

 これらは、この1、2年で東京・大阪で起きた労災死亡事故の一例にすぎない。」

 

いまや日本は世界のどの国も経験していない超高齢社会を迎えている。「人生百年時代」は今までとは違う、私たちに新しい働き方を求めているのであろう。

為政者の立場から見れば、少子・高齢化と言われ、人口減少が急速に進む日本において、高齢者は社会保障の対象者からその担い手になることが求められている、それが「一億総活躍」社会である。

 高齢になれば、受け取ることができる年金により経済状況は大きく異なる。働くことに対する意思、気力、健康状態も人それぞれに違う。老後レス社会と言っても、高齢者の数だけ、働き方、生き方がある。人間はただ一人の例外もなく老いる以上、老後レス時代とどう向き合うかは、すべての人が自分ごととして考えなければならない。

旧統一教会と自民党、そして家族

2022-09-11
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旧統一教会と自民党、そして家族

  今話題の旧統一教会と政権与党の自民党との関係について、その共通する理念の一つに「家族」というキーワードがある。

旧統一教会の教祖であった文鮮明自らが著したと言われる「平和を愛する世界人として―文鮮明自叙伝―」に描かれた家族観を少し長くなるが紹介する。「家庭は、神が創造した最高の組織です」「家庭は世界平和のためのベースキャンプ」として旧統一教会が目指す神の国、世界平和の実現のための基礎が家庭にあると位置づけている。旧統一教会を「世界平和統一家庭連合」と名称変更した理由もこうした家族観によるものであろう。 

さらに「家庭は愛の営みだということもできます。天国に行ってその包みをほどいてみれば、その中から良いお父さんとお母さんが飛びだしてきます。美しい子供たちが飛び出して来ます。慈愛に満ちたお祖父さんとお祖母さんが飛び出してきます。愛の包みに包まれているところが家庭です」独特な表現ですが、目指すところの家族として描かれているのは伝統的な三世代の大家族の姿であり、別のところでは「私は三代が一緒に暮らす家庭を勧めています」と記されている。ところが「西洋ブームのため」「東洋的な家族観がだんだん崩れていっています」と嘆いている。

家庭が大事だと言うが、今回、国会で野党のヒアリングに対して答えた元信者の「今望むのは、家庭や人生を壊すような高額献金のない世の中だ。これ以上、私たち家族のように苦しむ人たちを出したくない。」という言葉にどのように答えるのであろうか。

 

 次に自民党の家族観を見てみよう。戦前の「教育勅語」を「日本人の伝統的な価値観だ」と評価し、封建社会の伝統的な家父長的家制度を理想とし、「日本の文化で一番大事なのは教育勅語に書いてある家族主義、家族と伝統を大事にすることだ」とした自民党の西田昌司参院議員の3月23日の参院憲法審査会での発言は記憶に新しい。

さらに、自由民主党の「日本国憲法改正草案」によれば憲法の前文に「日本国民は、国と郷土を誇りと気概をもって自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体がお互いに助け合って国家を形成する。」とし、さらに第24条前文に「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族はお互いに助け合わねばならない。」としている。

さらに、安倍前首相はUPF(天宙平和連合、世界平和統一家庭連合系のNGO)のスピーチで、次のように述べている。
 「UPFの平和ビジョンにおいて、家庭の価値を強調する点を高く評価いたします。世界人権宣言にあるように、家庭は社会の自然かつ基礎的集団単位としての普遍的価値を持っているのです。偏った価値観を社会革命運動として展開する動きに警戒しましょう」と。ここでいう「偏った価値観の社会革命運動」とは憲法に保障された「個人の尊重」に基づいて同性婚や
夫婦別姓の実現を求める運動をさすものである。

 見てきたように旧統一教会の考える家族と自民党の特に保守的な人たちとの家族に対する考え方は、神の存在を除けば大差のないものである。社会的に問題のある組織として何十年も前から指摘されている「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)と自民党議員らの抜き差しならぬ関係の深さはこんなところにもあるのではないか。

 

以上のような旧統一教会や自民党の保守層が描く家族と、現実の日本の家族は大きく違ったものとなっている。伝統的な家父長制度を支えてきた三世代世帯は全世帯のわずか5.%にしかすぎないのである。その代わり急増しているのが単身世帯や夫婦のみの世帯である。いま日本における家族構成員の数は急速にその数を減らすと同時に家族の担う役割りは限られたものとなっている。さらにその多様性も現代の家族の特徴である。

旧統一教会や自由民主党の保守的な人たちの主張するように家族の役割を強調する考え方を家族主義という。家族主義では、家族がそのメンバーの福祉に主要な責任を負うべきと考える。ところが現実には、家族規模の縮小、その機能を低下によりかって家族が担ってきた子育てや介護等の問題に対して、社会保障、福祉を充実させることによりその問題を解決しようとする方向をもたざるを得なくする。「介護の社会化」や「社会による子育て」は不可避な流れであるが、家族主義は再びそうした役割を家族のもとに押し戻そうとしている。

物価の高騰は介護現場にも

2022-09-04
注目NEW
物価の高騰は介護現場にも

 7月の消費者物価指数は前年からの上昇幅が2・4%と前月からさらに拡大した。電気、ガス代や食料品の高騰が続き、家計への影響は大きい。さらにこの秋以降も物価の高騰は続きそうだと言われている。

10月からは介護保険の利用料を決める介護報酬が一部改定される予定だ。これによって利用料も上がることになる。これは岸田首相の「介護職員の賃金を9,000円引き上げる」という一声で始まったものが、これまではその財源が公費で行われてきたものが、10月からは介護職員の処遇改善加算という介護報酬の中に組み入れられることによるものである。

介護保険では入浴や排せつに関する福祉用具の購入に対して9割が支給される。ポータブルトイレやお風呂で使用する椅子などであるが、これらの品目もこの10月から値上げが予定されていると言われている。住宅改修で手すりを設置する際の金具も値上げが予定されている。さらに介護現場では不可欠なオムツ類も例外ではない。

こうした物価の高騰にも関わらず、多くの高齢者の収入は公的年金に依存している。2022年4月から年金は0.4%引き下げられた。主な収入源である年金額が下がる一方で、食費や光熱費などの生活費が上がり続けることになっているのである。こうした影響から介護サービスの利用控えなどが起こることが心配される。

影響の波は介護事業所にも及んでいる。福祉医療機構の調査によると、「原油価格や物価高騰による影響を受けている」と回答した施設は88.5%に上り、そのうち、2022年度上半期のコストが前年度比で5%以上の増加見込みと回答した施設は48.9%になったとしている。特に影響が大きいと回答のあった項目は、水道光熱費95.6%、車両費(ガソリン代など)と給食費が52.5%となっており、これらはいずれも介護事業所に必要な品目である。

有料老人ホームへの入居の費用も高くなることが予想されている。「全国有料老人ホーム協会」は、ことし4月に加盟する有料老人ホームの事業者に緊急のアンケート調査を行った。その結果45%に当たる58法人が「利用料を引き上げる意向がある」と回答しているという。

 こうした中で、全国老施協・全国老健協会 ・日本認知症グループホーム協会は全国の自治体に対して3団体連名の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の活用も含め緊急的な支援を求める要望書を令和4年8月19日付けで送付している。

「103万円の壁」

2022-08-30
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「103万円の壁」

  介護現場で働く多くの女性が、働く時間を調整して年収を抑える「就業調整」をしている。税制や社会保険の制度上、収入を抑えるほうが有利になる「年収の壁」があり、女性の経済的な自立を抑えるとともに、介護現場の人材不足の一因ともなっている。

103万円や130万円の年収制限は税制や社会保険と連動している。所得税課税では、本人の年収103万円、配偶者控除や配偶者特別控除では配偶者の年収103万円、社会保険では扶養家族の年収130万円で対象になるかどうかの線引きがそれぞれあり、「103万円の壁」「130万円の壁」と言われてきた。

 こうした税制や社会保険の「壁」に加え、企業が従業員に支給する「配偶者手当」はこの壁を一層強固にしている。 企業により名称や内容はさまざまだが、家族を持つ従業員に支給する「家族手当」、家族のうち配偶者を対象とする「配偶者手当」などがある。

人事院「職種別民間給与実態調査」によると、2021年には4社に3社は家族手当があり、その約4分の3は配偶者も対象としている。配偶者だけの場合、月額は平均1万2713円だ。ほとんどの場合、配偶者の年収制限があり、103万円や130万円が主流になっている。 配偶者手当は「妻は家事・育児、夫は仕事」という夫婦間の性別分業を前提としており、現状に見合わないとされ見直しが進んでいる。もちろんいっきに家族手当をなくすことは働く人の賃金の切り下げにつながり簡単にそれがなくなるわけではないが、同一労働同一賃金の流れも、配偶者手当など家族手当の見直しを求めている。いずれにしても、家族手当は縮小に向かう過渡期にあると言えるようだ。

 介護現場で働く女性にとって、こうした「103万円の壁」が無くなれば人材不足解消につながると考えられる。

ところが今年10月1日から、従業員101人以上の企業は、パートなど短時間労働者も社会保険加入の対象となることになった。介護の世界で従業員101人以上の事業所はそんなに多くはないので、その影響がどの程度かはわからないが、一般企業では10月1日以降は社会保険も適用になる可能性があると伝えると、「配偶者の扶養に入っているので社会保険には加入したくない」、保険料が支給総額より天引きされ「手取りが減るのは困る」という声が多く、結果として退職を希望するといった現象も出ていると聞く。さらに、短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用は2024年には、従業員51人以上に範囲が拡大されるといわれている。 

いずれにしても、税制や社会保険、それに家族手当といった制度が今後どのようになるのか。介護現場の人材不足にも大きな影響を与えることになることは間違いないようである。

生活保護受給中の車の運転

2022-08-25
チェック
生活保護受給中の車の運転

以下は朝日新聞デジタル2022年8月21日の記事の抜粋である。

三重県鈴鹿市社会福祉事務所が身体障害がある息子の通院に限って、車の利用を認める決定をしたことに対し、三重弁護士会は「日常生活での利用が認められるべきだ」として決定を変更するよう同事務所に勧告した。

 生活保護世帯の車保有については、1963年の旧厚生省の通知で、「障害者の通院のために定期的に利用されることが明らか」などの要件を満たしていれば認めてよいとされている。

勧告書などによると、女性と障害がある50代の息子の世帯は昨年6月、同事務所に息子の通院のため車使用を申請。同事務所は昨年7月、「利用のたびに、運転記録票に必要事項を記録し、毎月提出する」などの条件を付し、「息子の通院に限り利用を認める」と決定した。同事務所は決定に基づき、数度にわたり運転記録の提出などを口頭や文書で行政指導。今年6月、提出された運転記録票に虚偽記載があったなどとして、生活保護の廃止に向けた聴聞を行うと通知した。

 これに対し、三重弁護士会は勧告で過去の判例などを引き、旧厚生省通知の要件を満たして車の保有が認められたからには、「日常生活でも利用することは、生活保護法が定める被保護者の自立助長や保有資産の活用の観点から、当然に認められるべきだ」との見解を示した。その上で、運転記録票の提出などの条件を付け、通院に限って車の利用を認めた決定や行政指導は法の趣旨に反した過剰な制約で、移動の自由やプライバシー権を侵害するとした。

 

生活保護は生活に困っている人に、憲法が定める最低限の生活を保障し、その人が自力で生活を立て直していけるよう援助することを目的として設けられている制度である。保護の申請にあたっては「預貯金がない」「不動産などの財産がない」などいくつかの条件が課せられており、車も資産とみなされるので、生活保護受給中は原則車を所有も運転もできないとされているが、特別な理由があり車の所有が認められる場合もある。次のような場合、車の所有が認められることもあるとされている。

1. 通勤や通学に利用する

「公共交通機関の利用が著しく困難」な場合で、どう考えても車が無ければ通勤が難しい場合や、また、何らかの障害があり、通勤や通学に車が不可欠な場合、保育園への送迎等が      

このケースに含まれるとされている。

2. 通院に利用する

病気があって定期的に病院に通わなければいけない場合で、「公共交通機関の利用が著しく困難」な場合、車の所有が認められるケースがある。

3. 自営業のために利用する

自営業を営んでおり、事業を続ける上で車が不可欠な場合は認められるケースがある。

4. 半年以内に生活保護から脱却する見込みがある

就労の予定があるなど6ヵ月以内に生活保護から脱却することが見込まれる場合には、車は処分対象から外れることがある。

なお、これらの要件を満たす場合でも、所有が認められる車は処分価格が低いものとされており、処分価値の高い高級車の所有は認められない。

 

 さて今回の鈴鹿市の判断をどのように考えるか私見を述べてみたい。

福祉事務所が自動車の保有を認める際、「保有を認めた目的以外に使用しない」ように求めることは少なくない。しかし、もともと「公共交通機関の利用が著しく困難」場合に認められているのであるから、目的以外であっても使用ができなければ大変不自由なこととなる。過疎地における高齢者の運転免許証の返納は高齢者の死活問題だともいわれているが、生活保護の受給者も同じである。生活保護の受給とともに買い物などもできず、途端に生活に支障を来すこととなり、そもそも生活保護の趣旨からしてもおかしな話である。今や自動車の普及率は一世帯に1台どころか2台所有という世帯も決して珍しくない時代である。

そもそも「保有目的以外で利用してはならない」とする明文化された規定があるわけではない。また、平成25年の大阪地裁判決では、「日常生活において保有する自動車を利用することなく、費用を負担してタクシーを利用したり、第三者の介護を求めたりすることは補足性の原則(生活保護法4条1項)にも反する」とした上で、「当該自動車を通院等以外の日常生活の目的のために利用することは、被保護者の自立助長(生活保護法第1条)及びその資産の活用(同法4条1項という観点から、むしろ当然に認められるというべきである」と述べている。また、秋田県知事平成19年1月31日裁決も、生活用品として認めた自動車を通勤に使用したことを「生活保護の趣旨に反しない」とした上で、勤労収入から維持費(燃料費や車検代)の控除を認めている。

 「利用のたびに、運転記録票に必要事項を記録し、毎月提出する」などと条件を付け、提出された運転記録票に虚偽記載があったとして、保護を取り消すなどというやり方は昔の悪代官がやりそうなことである。今回の三重弁護士会の勧告はさしずめ水戸黄門の印籠ということになるのであろうか。

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