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ケアマネのつぶやき

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家族主義って何

2022-04-04
注目
家族主義って何

  自民党の西田昌司参院議員は3月23日の参院憲法審査会で、国民道徳の根源や教育の基本理念を明治天皇名で示した戦前の「教育勅語」を「日本人の伝統的な価値観だ」と評価し、その上で「日本の文化で一番大事なのは教育勅語に書いてある家族主義、家族と伝統を大事にすることだ」と述べたと報じられている。

 

家族主義とは何かを調べてみた。それによると「家族の構成原理,特に家父長的原理と情義的人間関係が外部の社会組織、集団にまで拡大浸透しているとき、そこにみられる行動様式,人間関係,価値体系を総称して家族主義という。」(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説)具体的には封建社会に伝統的な家族のカタチであり、長子相続にもとづき、長男が家産と家族員に対する絶対的な権限も持つものとされ、家族員は人格的に恭順・服従するもの、特に女性は「結婚する前は親に従うべき、結婚したら夫に従うべきで、夫がなくなったら息子に従うべき」という「三従」などと言われていた。

こうした「家父長的家制度」を制度化したのは近代の明治時代である。明治政府は戸籍制度を中心とした諸制度を通じて、家父長的家制度を制度として確立したのであるが、それが先に示した自民党の西田昌司参院議員が主張する教育勅語でもある。

時代遅れで懐古趣味の保守政治家のたわごとで済ますには、場所が憲法審査会という憲法改正を論じる公的な場所であるから看過できないものがある。さらにこれは西田氏の個人的見解にとどまらない。なぜなら自由民主党の「日本国憲法改正草案」によれば憲法の前文に「日本国民は、国と郷土を誇りと気概をもって自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体がお互いに助け合って国家を形成する。」とし、さらに第24条前文に「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族はお互いに助け合わねばならない。」と今の憲法にはない家族による助け合い、という新しい条文を設けている。

 

しかし、現実の日本の家族は大きく変わっている。厚労省より発表されている「国民生活基礎調査」では類型別世帯の推移が示されている。

それによれば減少している世帯類型は、

1970年    2019年

全世帯中の「夫婦と未婚の子のみの世帯」 41.2%     28.4%

  〃  「三世代世帯」        19.2%      5.1% 

逆に増加している世帯推計は

全世帯中の「単独世帯」         10.1%       26.5%

  〃  「夫婦のみの世帯」      10.7%      24.4%

ここで見えてくるのはかっての三世代世帯や、核家族といわれた世帯は減少し、特に家族主義の基礎となってきた三世代世帯はわずか5.1%しかないのである。その代わり急増しているのが単身世帯や夫婦のみの世帯である。いま日本における家族構成員の数は急速にその数を減らしているという事実がある。

かっての三世代家族では、子育てや病人や高齢者の介護をその家族の中で解決できる力を持っていた。しかし、数を減らし男も女も仕事に従事することが当たり前になった家族では、そうした仕事を家族内で賄うことを困難にした。そしてそれらの役割は、保育や介護、医療等として社会の手により実現せざるを得なくさせている。

こうした家族構成員の減少と家族の担う役割りの弱体化とともに、その多様性も現代の家族の特徴である。こうした家族の現実に対し家族主義の復権を主張してもそれは空理空論にならざるを得ない。

 

しかし、こうした家族主義の主張を単に頑迷な保守的政治家の懐古趣味の話として片づけることはできない。

2000年介護保険の開始にあたり議論になったのは家族の介護から社会のシステムとしての介護、つまり介護の社会化ということであった。ところがその前年に、当時の自民党政調会長の亀井静香議員が「子が親の面倒をみるのは日本の美風」と発言した。また介護保険の訪問介護の生活支援(家事援助)は原則家族のいない場合に限るという議論が国会で行われた。こうした家族主義をその信念とする保守の政治家の巻き返しもありその結果、介護保険は家族による介護を前提とした介護保険として、介護の社会化は中途半端なものとしてスタートすることとなった。

ことは介護保険だけではない。生活保護の申請を行うと、「扶養照会」が行われる。

「扶養照会」とは、生活保護の申請をすると、親や兄弟、子どものもとに「あなたの息子さん(きょうだい、親など)が生活保護の申請に来ているが面倒をみることはできないか」と連絡が行くのだ。様々な問題を抱え家族と連絡を取っていない人もいる。この「扶養照会」が生活保護申請のハードルとなっているとして問題となっている。

 短命に終わった菅総理大臣がそのスタートに当たって述べた決意表明は「私が目指す社会像。それは自助、共助、公助。そして絆であります。」であった。要は、困ったらまず自分で何とかししよう。出来なかったら家族や地域で助け合い、それでもだめなら最後に国がお助けします、ということである。

 家族主義は、今日における様々な問題に対して社会保障、福祉を充実させることにより解決しようとする動きに対して、再びそうした問題を家族のもとに押し戻そうとしている。

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